手術を回避する唯一の道
股関節の痛みが起こるのは、日常生活で股関節や股関節周りの筋肉に負担がかかっていることがそもそもの原因である場合がほとんどです。
せっかく一生懸命に整形外科や治療院に通っても、日常生活で良くない習慣があったり、普段の動作に悪い癖がついていたら、股関節の痛みを引き起こす大元の原因はそのまま残っていることになります。
これを雨漏りに例えると、水が垂れて濡れてしまった床を拭き続けているだけで、雨漏りのほうを止めようとしていないのと同じです。
どんなに治療を続けても、症状は良くなるどころか悪くなる一方です。
股関節の痛みや変形性股関節症を改善して手術を回避するには、あなたの普段の取り組みが非常に重要になってくるのです。
「わかりました。一体どのようなことに取り組めばいいんですか?」
はい、股関節の痛みや変形性股関節症を根本的に改善するために自分で出来ることには、大きく分けて2つあります。
1:股関節に負担をかけないこと
2:股関節周りの筋力をつけること
この2つです。
整形外科や治療院に通いながら、自分でもこの2つに取り組むことで、痛みを和らげ症状の進行を食い止められる可能性が高くなります。
今からひとつずつ解説していきます。
が、その前に『股関節周りの筋肉』についてもう少し詳しく説明しておきます。
これを理解しておかないと、自分で出来る取り組みを正しく行うことができません。間違った方法で取り組むと逆に症状を悪化させてしまう可能性がありますので、しっかり理解しておきましょう。
股関節の痛みや違和感が現れる場所
股関節の痛みや違和感は、体の前面の鼠径部(そけいぶ)、いわゆるVラインが一般的ですが、それ以外にもお尻の上や下、お尻の横(側面)にも出てきます。
また、一カ所だけが痛む人もいれば、何カ所も痛くなる人がいます。
なぜ色々な所が痛くなったり、人によって痛む場所が違ったりするのでしょうか?
それには股関節の動きと周辺の筋肉が関係しています。
脚を動かす時、たくさんの筋肉が働いている
脚を動かすときに股関節が働きます。そして、股関節の働きは脚の動かし方によって6種類に分類できて、それぞれ働く筋肉が違います。
1)屈曲(くっきょく)
ひざを曲げて胸のほうに近づける動きです。このとき、主に腸腰筋と大腿直筋が働きます。
2)伸展(しんてん)
足を伸ばして背中側に反らす動きです。このとき、主に大殿筋が働きます。
3)外転(がいてん)
脚を外側に開く動きです。このとき、主に中殿筋と小殿筋が働きます。
4)内転(ないてん)
脚を内側に閉じる動きです。このとき、主に大内転筋と長内転筋が働きます。
5)外旋(がいせん)
太ももを身体の外側にひねる動きです。このとき、主に梨状筋が働きます。
6)内旋(ないせん)
太ももを身体の内側にひねる動きです。このとき、主に中殿筋の前方部分が働きます。
このように、脚の動かし方によって働く筋肉が違います。日常生活の習慣や動作の癖によって、疲労が溜まって凝り固まってしまう筋肉が変わってきます。これが人によって痛い場所が違う理由です。
これを知ったうえで、これからお伝えすることを行ってください。
できるだけ股関節に負担をかけないようにする
最初に知っておいて頂きたいのは『股関節に負担をかけない方法』です。
股関節に負担がかかると、股関節周りの筋肉を使いすぎている状態になって、筋肉が凝って固くなってきます。このコリが痛みを引き起こします。
変形性股関節症の初期の痛みは、関節の痛みよりも筋肉の痛みであることが多いです。股関節周辺の筋肉の痛みは初期から末期まで全ての段階で起こっています。
また、股関節に負担がかかると、股関節の軟骨がすり減りやすくなり、変形性股関節症の症状が進行してしまいます。
ですから、普段から股関節に負担をかけないようにすることはとても重要なんです。
では、日常生活のどんな時に負担がかかって、どうすれば負担がかからないようにできるのでしょうか?
次は、日常生活の主な動作について股関節に負担をかけない方法をお伝えします。