変形性股関節症とは?
股関節の痛みをしずめて症状の進行を遅らせ、最終的に手術を回避するためには、まず股関節そのものや変形性股関節症という症状についての理解を深めることが大切です。
それができてこそ、最適な施術やセルフケアを選ぶことができるからです。
このブログにたどり着くまでにだいぶ調べられたかもしれませんが、今一度ここで必要な知識をイチから身につけておきましょう。
実は、身体全体を支えている股関節
脚の付け根にあって、下半身だけではなく身体全体を支える関節、それが股関節です。
股関節は、骨盤のくぼみ(寛骨臼:かんこつきゅう)に太ももの骨の先端の丸い部分(大腿骨頭:だいたいこっとう)がはまっています。
つなぎ目は関節軟骨(かんせつなんこつ)という弾力性のある組織で覆われていて、関節液で満たされた関節包(かんせつほう)に包まれています。
この関節軟骨は重要な部分で、次のような役割をもっています。
・骨が受ける衝撃を吸収する
・骨と骨との摩擦を防ぐ
・関節の曲がる角度を調整する
関節軟骨というクッションと、関節液という潤滑油のおかげで、私たちの股関節は滑らかな動きが可能になっています。
変形性股関節症の正体
ところが、関節軟骨が何らかの理由ですり減ってくると、骨盤のくぼみと太ももの骨の先端の丸い部分のすき間が狭くなってきます。
すると関節軟骨のクッション作用が低下して、股関節にかかる衝撃が強まります。本来なら関節軟骨で守られている部分が破壊されたり、すり減った関節軟骨の破片のせいで炎症を起こして痛みの原因となります。
関節軟骨がさらにすり減ると、骨盤と太ももの骨が直接ぶつかるようになり、骨まで変形して激しい痛みに襲われてしまいます。この状態を変形性股関節症と呼んでいます。
関節軟骨がすり減ってしまう3つの原因
では、なぜ関節軟骨はすり減ってしまうのでしょうか?原因は色々とありますが、大きく3つに分類されます。
- 加齢によって関節軟骨の弾力性が低下して、すり減っていく度合いが増す
- 肥満や生活習慣によって、関節軟骨に過度な負荷がかかっている
- 股関節の形状に異常があり、関節軟骨に過度な負荷がかかっている
実際はひとつの原因だけではなく、これらが重なっていることがほとんどです。
では、ひとつずつ詳しくみていきましょう。
原因1:「加齢」による関節軟骨の弾力性低下
関節軟骨は「コラーゲン」というたんぱく質と「水分」がくっついてできています。そして、水分が豊富なほど軟骨の弾力性は強くなります。
この「軟骨の水分量」にはヒアルロン酸が大きく関わっているのですが、体内のヒアルロン酸は年齢とともに減少していきます。軟骨の水分量が減って弾力性がなくなってくると、軟骨はすり減りやすくなります。
また、ヒアルロン酸は関節を包みこんで潤滑油の働きをしている関節液の主成分でもあるので、ヒアルロン酸が少なくなると関節の弾力性に加えて潤滑性も悪くなり、関節軟骨はなおさらすり減りやすくなってしまうのです。
原因2:「肥満や生活習慣」による関節の負荷増
股関節には、日常の動作でどのくらいの負荷がかかっていると思いますか?
実は、歩くだけで体重の4.8倍もの負荷がかかっています。これがジョギングになると、なんと体重の5.5〜7.2倍の負荷になります。
体重が50キロの人の場合、普通に歩くだけで240キロ。軽いジョギングをすると275〜360キロもの負荷が股関節にかかっていることになります。
しかしこれだけではありません。日本人特有の文化・習慣が股関節にさらなる負荷を与えています。
日本では昔から「脚を開くのは下品だ」と言われています。特に女性はあぐらをかかずに横座りやペチャンコ座りをしたり、ガニ股やO脚にならないように気をつけている方が多いです。
その結果、立っている時も座っている時も、無意識のうちに脚を内側にひねるように閉じてしまう傾向があります。
このように、股関節を内側にひねった状態を内旋(ないせん)というのですが、股関節にとってこの状態が長時間続くのは望ましくありません。
骨盤の奥に収まっている太ももの骨の先端が、だんだん前方にずれてきてしまいます。すると関節軟骨が本来の役割を十分に果たせなくなり、衝撃を吸収できなかったり、無理な力が加わったりして、すり減りやすくなるのです。
最初にお伝えしたとおり、股関節は下半身だけでなく体全体を支える関節です。私たちが思ってる以上に日常生活において股関節には大きな負荷がかかっているのです。
原因3:「股関節の形状の異常」による負荷増
ここまでお伝えしてきた加齢や生活習慣を原因とする変形性股関節症は、股関節自体に問題があるわけではありません。このような変形性股関節症を「一次性」と呼ぶのですが、実は日本では一次性の患者さんは20%程度と言われています。
変形性股関節症に悩む大部分の方が、これからお話する「二次性」つまり、もともと股関節自体に何らかの異常があり、それが原因で関節軟骨がすり減ってしまうものなのです。
日本では圧倒的に二次性が多く、股関節周りの筋力が落ちてくる中高年以降の女性が発症しやすいと考えられています。
整形外科や総合病院などで股関節の異常を指摘された方も少なくないはずなので、これから代表的なものを解説していきます。
臼蓋形成不全(きゅうがい けいせいふぜん)・寛骨臼形成不全(かんこつきゅう けいせいふぜん)
寛骨臼の形状には個人差があって、くぼみが浅かったり、十分な幅がなくて大腿骨頭を包み込む面積が狭い人がいます。このような状態を臼蓋形成不全、または寛骨臼形成不全といいます。
臼蓋形成不全があると、少ない面積で集中的に体重を支えることになるため、関節軟骨がすり減りやすく変形性股関節症を発症しやすくなります。
先天性股関節脱臼(せんてんせい こかんせつ だっきゅう)
股関節が生まれつきゆるく、生まれる前後で股関節が外れてしまう状態を指します。生後の乳児期や幼少期でも、おむつの当て方やだっこの仕方によっては脱臼してしまうため、両方を合わせて「発育性股関節形成不全(はついくせい こかんせつ けいせいふぜん)」と呼ばれることもあります。
股関節が不安定な状態のため、放置すると股関節の成長が妨げられたり、股関節の変形を起こす恐れがあります。
日本では、二次性の変形性股関節症は先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多いという特徴があります。
このように、変形性股関節症といってもその原因は様々です。原因が違えば、手術回避のためにやるべきことも当然変わってきます。
「自分の関節軟骨はどのような原因ですり減ってしまっているのか」
をしっかりと認識しておきましょう。
次は手術回避の取り組みを決めるもう一つのポイント「症状がどこまで進んでいるか」について詳しく解説していきます。